事務所の年末・年始のお休みは、12月28日(土)から1月5日(日)までで、1月6日(月)から平常通り業務いたします。
ご不便をおかけいたしますが何卒よろしくお願いいたします。
嫡出でない子とは、法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子(婚外子)のことです。他方、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子のことは嫡出子といいます。
民法の法定相続分に関する規定において、嫡出でない子の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とされています(以下、この規定のことを「本件規定」といいます。)。本件規定については、以前から、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反するのではないかということで争われてきましたが、最高裁判所は従来は合憲の判断をしてきました。
本裁判例は、平成13年7月に相続が開始した(被相続人が死亡した)遺産分割事件に関するものであり、本件規定が憲法に違反するかどうか、改めて最高裁判所が判断を示しました。
(決定の概要)
最高裁判所は、その大法廷において15人の裁判官全員一致の意見として、本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたとして、違憲判断を下しました。
また最高裁判所は、上記違憲判断は、平成13年7月から本決定までの間に相続が開始した他の相続について、本件規定を前提としてなされた遺産分割審判、遺産分割協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないとも判示しました。
従来、最高裁判所は本件規定を合憲と判断してきましたが、合憲とされた事件のうち最も相続開始が遅いものは、平成12年9月に相続が開始された事件でした。今回の最高裁判所の決定では、過去に合憲判断をした事件について、その相続開始時点における合憲判断を変更するものではないとも述べています。つまり、平成12年9月までは、本件規定は合憲であった(そのことは変更しない)が、遅くとも平成13年7月以降は違憲となったという趣旨ととらえるのが妥当かと思います(平成12年10月から平成13年6月までの間が合憲だったか違憲だったかは判断が出ていません)。
なぜ、時期によって合憲だったり違憲だったりするのか、その理由として最高裁判所は、昭和22年の民法改正当時から現在までの社会の動向、家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化などを挙げています。そして、遅くとも平成13年7月当時においては、立法府の裁量を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的根拠は失われていたとしています。
なお、平成13年7月から現在までの間には多くの相続が発生しており、すでにその相当部分が、遺産分割協議の成立(合意)や遺産分割審判の確定などによって法律関係が確定的になっていると思われます。その中には、本件規定が合憲であることを前提として相続分を決めたものが多く含まれていると考えられますが、これがくつがえるとなると、大きな混乱が起こってしまうことが予測されます。そこで最高裁判所は、そのようなことが起こらないように、本決定の違憲判断は、既に確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼさないと判示しているものです。
(出典)
判例時報2197号10頁
(文責:鈴木隆臣)
遺産分割事件を受けるなかで、遺言書があれば、こんなにもめることはなかっただろうな、と思うことがあります。遺言書でどの財産を誰に渡すということを決めておけば、相続人の間で、誰がどの財産を取得するか等といった争いの可能性を相当減らすことができます。また、遺言執行者を決めておけば、遺言執行者が相続人に財産を引き渡す、換価する等といった相続の実現をすることができるので、相続人の負担(各種窓口への問い合わせ、必要書類の取り寄せ、相続人全員の捺印等)を軽減することができます。あるいは、遺言書のなかで、葬儀の希望を入れたり、相続人以外の人で特別面倒を見てくれた人に財産の一部を渡したり、なぜ遺言書を遺したか等といった自分の気持ちを書き入れたりすることもできます。遺言書の作成について、お気軽にご相談ください。
(文責:伊藤)
9月2日から6日までの間、上海にある上海兆辰匯亜律師事務所にて研修を受けてきました。同事務所は、主として日系企業を顧客としてリーガルサービスを提供しており、特に知的財産権の保護に関して豊富な経験を有しています。中国法務の現場を法律事務所の中から見ることができ、非常に参考になりました。
日中関係は、政治面では現在良好とは言えない状態にありますが、経済面では切っても切り離せない関係にあり、それは今後も続いていくでしょう。当事務所としても、必要に応じて上海兆辰匯亜律師事務所と連携を図るなどしながら、中国法務にも対応していきます。
(文責:中川)
当事務所は、9月17日から27日までの間、モンゴルから名古屋大学法学研究科に留学しているドルジゴトブ・ボラルさんをエクスターンとして受け入れました。ボラルさんからは、モンゴルの社会や文化について色々と教えてもらい、とても刺激になりました。
日蒙は、すでに大相撲では緊密な関係を築いていますが、これからは経済でも関係が深まっていくと考えられます。ボラルさんがモンゴルで弁護士となった暁にはぜひ一緒に仕事をして、司法面から日蒙関係の架け橋となりたいと思います。
(文責:中川)
9月10日に司法試験合格者発表があった。今年は、2049名が合格した。
彼らは、これから1年間の司法修習(全国各地での10ヶ月間の実務修習と司法研修所における2ヶ月間の集合修習)を経て、2回試験といわれる司法修習生考試に合格すると、晴れて裁判官、検察官、弁護士になる資格を付与される。
彼らは、いま、合格したことを喜び、将来に対する希望に胸をふくらましているところであるが、しかしながら、司法試験に合格したからといって手放しで喜んでいられる時代ではなくなった。合格者の急増とバブル経済崩壊後の長引く不況が法曹界、特に弁護士を取り巻く環境を一変させた。
法科大学院卒業が司法試験受験資格となり、また、司法修習生の給与は廃止されたことにより、合格者(法曹志望者)の経済的負担は増大し、弁護士資格は取得しても、法律事務所に就職できない者も増加している。法科大学院入学者数は大幅に減少し、若者の法曹界離れが進んでいる。多くの若者が法曹界に魅力を感じないことは、法曹界にとってもちろんのこと社会にとっても極めてゆゆしき問題である。
現在、政府の法曹養成制度検討会議が、法曹養成制度の在り方について検討を行っているが、市民が親しみの持てる、特に若者に魅力のある法曹を目指す、養成制度が構築されることを期待する。
(文責:石原真二)
本件は、公正取引委員会(以下、公取といいます。)が納付を命じた独占禁止法(以下、独禁法といいます。)の課徴金(以下、単に課徴金といいます。)について、会社の更生手続において更生債権の届出がなされていなかったので、更生計画認可決定により免責になったとして、公取の課徴金納付を命じた審判審決の取消を求めた行政事件です。
本判決は、争点1及び2について後記のとおり判示して、公取の課徴金請求権は、免責されたものと認めて公取の主張を排斥しました。
このように、更正手続に関しては、公取であっても判断を間違う可能性があります。取引先が更正手続を開始した場合などには、その対応にご注意ください。
(事実経過の概要)
(1)H12~H16 会社 独禁法違反行為
(2)H16・11・18 公取 排除措置審判開始決定
(3)H20・12・31 更生手続開始決定
(4)H21・3・31 更生債権等届出期限(公取 届出なし)
(5)H22・2・28 更生計画認可決定
(6)H22・7・1 同確定
(7)H22・9・21 公取 排除措置審判審決
(8)H22・10・22 同確定
(9)H23・6・15 公取 課徴金納付命令
(10)H23・7・14 管財人 審判手続開始請求(独禁法48条の2第5項)
(11)H23・10・24 更生手続終結決定
(12)H24・9・25 公取 課徴金納付を命ずる審判審決
(本件の争点)
1.本件課徴金債権は、更生債権に該当するか。
2.本件課徴金債権は、更生計画認可の決定により免責されるか。
(本判決の判断)
1.争点1について
(結論)積極
(理由)会社更生法2条8項は、更生債権とは、更生会社に対し更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権又は次に掲げる権利であって、更生担保権又は共益債権に該当しないものをいう、と規定しているところ、更生手続開始前の原因に基づく請求権とは、債権発生の基本的構成要件に該当する事実が更生手続開始前に存在するものであることを意味し、当該債権自体が更生手続開始の時点で既に成立していることまでは要しないが、その債権発生の基本となる法律関係が更生手続開始前に生じ、債権の成立に必要な事実の基本的部分が更生手続開始前に具備されていることが必要であると解されるので、本件のような独禁法上の課徴金債権については、課徴金の対象となる独禁法違反行為が更生手続開始前にされた場合には、課徴金納付命令が更生手続開始後にされたとしても、更生手続開始前の原因に基づく請求権に該当する。
なお、本件課徴金債権は、更生担保権及び共益債権に該当しない。
したがって、上記の事実経過の下において、本件課徴金債権は、更生債権に該当する。
2.争点2について
(結論)積極
(理由)独禁法は、課徴金を納付しないときは、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる旨規定しており、会社更生法2条15項は、同法において、「租税等の請求権」とは、国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することができる請求権で共益債権に該当しないものをいうと規定しているから、本件課徴金債権は「租税等の請求権」に該当し、同法204条1項に基づき、更生計画認可決定によって免責された。
(参照:公正取引委員会ホームページ)
(文責:花村)
当事務所では、企業の従業員に対する研修・セミナーへの講師派遣業務を提供していますが、8月9日には、西春日井地区市長職員研修協議会からのご依頼により、同地区における地方公共団体の一般職員に対する研修において、当職が講義を行いました。
企業と地方公共団体という違いはあっても、講師業務の実施においては、専門的な知識の提供と講義の分かり易さの両立を図ることにいつも神経を使います。
もし、従業員に対する研修・セミナーにご興味がおありでしたら、遠慮なく当事務所までご連絡ください。
(文責:中川)
当事務所では、8月14日~16日を夏期休暇とし、19日から通常業務となります。
ご不便をおかけいたしますが何卒よろしくお願いいたします。
1 成年後見制度をご存知でしょうか。
認知症等によって判断能力が不十分になった人等が、不動産や預貯金など自分の財産を管理したり、身の回りの世話のために介護サービスや施設に入居するための契約を結んだり、あるいは自分に不利益な契約を結んでしまったりした場合に対処できるようにするため、後見人を選任し、後見人によって法律行為がなされるようにする制度です。(昔は、禁治産制度と呼ばれていました。)
社会の高齢化に伴い、最近よく御相談を受けるようになりましたので、簡単に説明します。
2 成年後見制度には、大きく分けると法定後見制度と任意後見制度があり、法定後見制度は、御本人の判断能力に応じて「後見」、「保佐」、「補助」の3つがあります。
ここでは、判断能力が常時欠けている状態の方に対する後見制度について説明します。
成年後見人の選任を申し立てるのは、家庭裁判所に対してであり、申し立てることができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族(子供はもちろん、兄弟姉妹も入ります。)等です。
家庭裁判所により後見人が選任させると、後見人は、本人の財産に関する全ての法律行為を本人の代理人として行うことができます。また、本人がした日常生活に関する行為以外の法律行為を取り消す権限が成年後見人に与えられます。これによって、判断能力に欠ける本人の財産を保護するとともに、必要な介護契約などを後見人ができるようにしているわけです。
成年後見人の選任は、あくまで本人を保護するための制度です。公職選挙法による選挙権等の制限は、法改正により無くなりますが、本人保護の制度を選挙権の制限に用いるのは、どう考えても筋違いで当然のことと言えるでしょう。
次に、成年後見人にはどのような人が選ばれるのでしょうか。
基本的には、本人の親族が選ばれることが多いようです。しかし、親族以外にも法律、福祉の専門家や、福祉関係の公益法人が選ばれる事例もあります。
親族に成年後見人のなり手がない場合でも利用は可能ですし、親族よりも望ましい場合もあります。
これからの高齢化社会を考えると、成年後見人の不祥事など問題はあるものの、積極的に利用しても良い制度と思います。
3 さて、成年後見制度にはもう1つ、任意後見制度というのがあります。
これはあまり知られていませんが、本人の判断能力が十分なうちに、将来に備えて、あらかじめ自分が選任した任意後見人に自分の生活や介護あるいは財産に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公正証書で作っておくというものです。(公正証書で作成する必要があります。)
この場合、後見人となる任意後見人の代理権の範囲は、契約(公正証書)により決まります。
本人の判断能力が低下し、実際に後見事務を始める必要が生じた場合、任意後見人は家庭裁判所に対して後見監督人の選任を申し立てることになります。そして、裁判所で選任された後見監督人(弁護士が選任される例が多いようです。)のもとで、任意後見人が決められた後見事務を行うことになるのです。
この任意後見制度の特徴は、本人が後見人になる者を選べるということです。また、裁判所により後見監督人が選任されますので、安心して後見事務を任せることができます。
最近、相続については遺言書を作成する方が増えていますが、この任意後見制度は相続の1つ前段階、自分の判断能力が衰えた時に備えるものです。
現在のところあまり事例がないようですが、積極的に活用する意味のある制度と思います。
(参照:法務省成年後見制度ホームページ)
(文責:杦田)
1 法務省は、民法の債権法部分について今日の社会経済情勢に適合させるための抜本的な見直しを行うこととし、平成21年11月から法制審議会民法(債権関係)部会において、調査・審議を行っています。
審議の進め方は、大きくわけて3つのステージで議論をすることとし、第1ステージにおいては論点整理が、第2ステージにおいては中間試案に向けての審議が、第3ステージでは改正要綱案のとりまとめに向けての審議が行われる予定で、各ステージの間で2回、パブリックコメントの手続きをとることとなっておりました。
現在は、第2ステージと第3ステージ間のパブリックコメントの手続期間が、平成25年6月17日で締め切られた段階にあります。
愛知県弁護士会司法制度委員会は、上記手続において中間試案に対する意見書を提出しており、私も同委員としてその一部を担当しました。
2 この民法(債権関係)の改正については、そもそも必要なのかという疑問を呈する声も大きいところですが、現在は着々と改正に向けて作業が進んでいる状況です。民法は、日常生活、経済活動に最も直結する法律であると言っても過言ではなく、その改正は大きな影響を生じます。民法は制定されてから100年以上が経過し、法律上の文言の意味や解釈を、裁判例(判例)によって補っている部分も多くあり、今回の改正の趣旨は、社会・経済情勢に合致させるとともに、このような裁判例を法律文言に直接反映させ「分かりやすい民法」を目指すものであると説明されます。
3 法律は、世の中で起こりうる様々な事柄に対する判断規範であり、いわば日常生活の交通標識の機能を担っているものですから、分かりやすいことは必須ですが、世の中のすべての事柄を想定し尽くすことはできず、どのような表現になろうとも、解釈に委ねられる部分は残ります。
日常業務において、民法に密接に関わっている私たちは、今回の改正の動向を注視し、述べるべき意見は述べていきたいと思いますし、改正がなされた際には、これによって無用な混乱がおきないよう、皆様への周知が図られるよう努めていきたいと思います。(文責:清水)
本件は、適格消費者団体である原告が、専門学校を経営する被告に対して、被告が入学者との間で締結している契約条項のうち、入学辞退者に対して納入済みの学費を一切返還しないとの条項が消費者契約法9条1号により無効であるとして、今後の同条項の使用の差止めを求めた事案です。
裁判所は、原告の請求を認め、被告に対し、入学辞退者に対して納入済みの学費を一切返還しないとの条項を使用してはならないと命じました(なお、厳密には、「一切返還しない」との約定が禁止されたのであり、「一部を返還しない」との約定まで禁止されたものではありません。)。
今回は、適格消費者団体の行う差止訴訟とは何かについて簡単に説明します。適格消費者団体の行う差止訴訟は、事業者が消費者との間で契約を締結する際に使っている契約書ひな形の中に、消費者契約法に違反する契約条項があるとき、それによって被害を受ける消費者自身の手ではなく、適格消費者団体という消費者契約法13条に基づいて内閣総理大臣の認定を受けた団体が、いわば消費者を代表して、当該事業者に対して裁判手続によりその是正を求めるという制度です。
一般消費者の方を相手に事業を行う企業の方は、個々の消費者ごとに一から契約交渉を行うというより、予めひな形を用意しておき、定型的に契約することが多いと思います。もしこのような定型的な内容の契約条項の中に消費者を不当に害する条項が含まれていた場合、多数の消費者が同じ被害を受けることになりますが、各消費者の受ける被害は、往々にしてそれほど大きくないもので、裁判費用をかけていては、元が取れないことが多く、しかも、他にも多くの消費者が被害を受けるので、「誰かが声を上げてくれるはず。自分の代わりに誰かが声を上げてくれれば、自分も費用をかけずに救われる」と他人任せの心理状態に陥りがちです。つまり、いわゆる消費者被害は、構造上消費者が泣き寝入りする形で顕在化しないままになりがちではないかと考えられたのです。このような事情を背景にして、消費者団体が消費者被害を監視し、被害の発生を確認したときには、消費者に代わって事業者に対して裁判手続によりその是正を求めることができるとしたものです。制度発足後、各地で適格消費者団体が発足し、熱心に活動しています。
このような状況ですので、被害に遭われた消費者の方にとっては泣き寝入りしないでよいことになりますし、一般消費者の方を相手に事業を行っている企業の方々も、上記のようにトラブルが顕在化しやすくなってきているので、この機会に、ルーティンワークとして日頃何気なく使用しているお手元のひな形の中に、お客様を不当に害してしまうような契約条項が含まれていないか、再確認されてみてはいかがでしょうか。
なお、近時は、上記差止請求訴訟に加え、多数の消費者が消費者被害に遭った場合に適格消費者団体が消費者の代わりに主体となって救済を求めることができる制度も検討されているようです。詳しくは、消費者庁消費者制度課のホームページ(http://www.caa.go.jp/planning/index.html)をご覧下さい。
また、本件については、専門学校側は判決を不服として控訴しているようですので、上級審の判断が注目されるところです。
(出典)
判例時報2177号92頁
(文責:千葉康一)
入所して2か月足らずですが、これまでの職務との違いとして感じたところを報告します。
ひとつ目は、依頼者の方と一緒に喜ぶ(悲しむ)ということです。
弁護士として仕事をしていますと、依頼者の方に満足して頂ける成果を上げることができたときもあれば、逆に、どうしても残念な結果にとどまってしまうときもあります(ない方がよいのですが。)。このようなとき、依頼者の方が喜んで下されば、私自身も大変うれしく思いますし、逆に、依頼者の方が残念に思われているときには、私自身も非常に申し訳ない気持ちになります。このような経験は、中立の立場では得がたいものです。
ふたつ目は、外出が多くなったということです。以前と比べて、現場にお邪魔して重要な出来事を目撃したり、紛争の元を自分の目で確認したりすることが多いと感じます。(文責:千葉)
本件裁判例は、債権者が、債務者の財産に対して強制執行するため、債務者の有する普通預金の差押えを裁判所に申し立てた事例に関するものです。
例えば、金銭の支払いを命じる判決が出たのに債務者が支払ってくれないときなど、債権者は、判決に基づいて債務者の財産に対して強制執行することができます。債務者の預金に対して強制執行をするときは、債権者は、裁判所に預金債権の差押えを申し立て、裁判所から、その預金口座のある金融機関に対して差押命令を送達してもらいます。その場合、差押命令が金融機関に届いた時点に口座にある預金を差し押さえるのが一般的です。
ですが、この裁判例の債権者は、差押命令が金融機関に届いた時点の預金だけでなく、それが届いた日から1年を経過するまでの1年間にその口座に入金するお金(つまり将来の預金債権)についても差押えを求めました。
(判決の概要)
最高裁判所は、金融機関において特定の口座の出入金を自動的に監視して一定額(差押対象金額)を上回る部分についてのみ払戻請求に応じることを可能とするシステムは構築されていないこと等を理由として、将来の預金債権の部分の差押えを不適法と(すなわち否定)しました。
確かに、将来の預金債権の部分まで差押えを認めてしまうと、金融機関としては、長期間にわたって、差し押さえられた口座の残高が差押対象金額を上回ったか否か常に見張っていなければならず、それを自動的に監視できるようなシステムがなければ、金融機関に過度の負担をかけることになってしまうものと思われます。
預金口座の差押えについては、債権者の債権回収の手段として重要である反面、金融機関側において差押えの対象となる預金を速やかに識別できるかどうか等の問題があり、近時、重要な判例もいくつか出ているところです(最高裁判所平成23年9月20日決定、最高裁判所成25年1月17日決定等)。参考にして下さい。
(出典)
判例時報2170号30頁
(文責:鈴木隆臣)
このたび当事務所は、前京都地方裁判所判事補の千葉康一弁護士を新たに迎えることになりました。
千葉弁護士は、「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」の規定に基づき当事務所に勤務することになりましたが、勉強熱心で誠実な人柄であり、当事務所に新たな活力を与えてくれるものと期待しております。同弁護士には、私ども同様、ご交誼・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
所長:石原真二
▼千葉弁護士あいさつ
はじめまして、千葉康一と申します。このたび、判事補の身分を一旦離れて、4月から2年間の予定で、当事務所において弁護士として執務することになりました。 依頼者の方々と真摯に向き合い、少しでもお役に立てるよう、日々研鑽を重ねて参る所存ですので、よろしくお願い申し上げます。
本裁判例は、工場跡地である土地の売買において、「将来において土壌汚染が発見された場合でも、一切の責任を負わない」旨定めていた免責特約について、その効力が争われた事案です。
売買契約においては、目的物に客観的な性質・性能が欠如している場合などには、目的物に瑕疵(かし)があるとして、売主が損害賠償責任等の担保責任を負うのが原則ですが、契約上、このような売主の瑕疵担保責任を負わない旨の免責特約を定めることも可能です。しかし、一定の場合にはその特約は適用されません(参照:民法572条)。本件では、売買契約締結後に土地が六価クロムに汚染されていたことが判明しましたが、売主が以前に本件土地上において六価クロムを使用していたこと等から、売主の瑕疵担保責任を免責する特約の効力が争われました。
(判決の概要)
裁判所は、売主が本件売買契約の締結に先立って、本件土地の土壌調査を行ったこと、その際には六価クロムが検出されなかったこと等から、本件汚染に関する売主の悪意や重過失を否定する旨の判断を行いました。
本件裁判は未だ確定していないようですが、土壌汚染が社会問題となる昨今では、土地の売主にとっても買主にとっても参考になる事例と言えます。
(出典)
判例時報2170号40頁
(文責)
中川
当事務所は、2月25日から3月1日までの間、ベトナムから名古屋大学法学研究科に留学しているファム・ハイ・アンさんをエクスターンとして受け入れました。アンさんは、現在、知的財産法を専攻されています。
既にベトナムへは多くの日本企業が進出していますが、ベトナム法に関する専門的な法務の需要は高まっています。当事務所も、ベトナム法を含めた海外法務に関するリーガルサービスについて更なる充実を図っていきたいと考えています。(文責:中川)
本年もよろしくお願い致します。